「三和土」は”土”なのになぜ強いのか!

皆さんは「三和土(たたき)」という言葉を聞いたことがありますか?
昔ながらの日本家屋では、玄関や土間といえば三和土が定番でした。
素足で歩くとひんやりとして、どこか懐かしい土の香りがするあの床。
でも、あれはただの「土」ではありません。叩き締めることで石のように硬くなる、不思議な素材なのです。
三和土の原料は、**「土」「石灰」「にがり」**の三つ。
名前の「三和」は、まさにこの三つを和(あ)えることから来ています。
石灰が空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを作り出し、にがり(塩化マグネシウム)がそれを固める接着剤の役割を果たします。
そして最後に人の手で何度も何度も叩き締めることで、内部の空気が抜け、密度が増し、まるで岩のような強さになるのです。

 


 

昔の人は、理屈ではなく「手の感覚」でその硬さを生み出していました。
材料も、工具も、自然と身近なものばかり。
それでも長い年月に耐える床をつくることができたのは、まさに経験の知恵の結晶です。

 

しかし、現代では石灰やにがりを扱うのが難しく、施工にも時間がかかるため、三和土の技術はしだいに姿を消していきました。
そこで私たちは、その「自然素材の強さと風合い」を現代の技術で再現するために開発したのが**「タタキバインド」**です。
特殊なバインダーを配合し、土本来の質感を残しながらも、短時間で硬化しやすく、誰でも扱いやすい配合を実現しました。

 

「土なのに強い」。
その秘密を受け継ぎ、現代の建築現場にふさわしい形でよみがえらせることが、私たちの使命です。
自然と調和しながら長く使える素材――それが、これからの日本の床のあり方だと思います。 宮崎