
先月NHKの朝のニュースで、コンクリートを発熱させる技術の実証実験を始めたという報道があり、画面に注目すると、通電機能を持たせたコンクリートを発熱させ、融雪に活用するというもの。マサチューセッツ工科大学と北海道のコンクリート会社がコンソーシアムを設立しており、その活動の一環として実施されているという内容でした。NHKだったので企業名は伏せられていましたが、よもやあの企業かなと調べてみたら、やはり以前にブログで取り上げた「ひび割れを自己治癒するコンクリート」を開発した会澤高圧コンクリートさんでした。こういった基礎技術の開発に意欲的に取り組む凄い会社だなぁと感心させられました。
蓄電コンクリートは電導性のあるカーボンブラックをコンクリートに添加して作るそうなのですが、電導性を高めるためにカーボンブラックを増やすとコンクリート自体の強度が落ちてしまうという課題があるとのこと(コンクリートに顔料を入れすぎると脆くなるのといっしょですね)。しかし、課題克服のため試作に試作を重ねているとのことで、発熱するコンクリートの実用化は近そうです。蓄電するコンクリートに関しては、その実装に際して、多くの企業が関心を寄せているということで今後大きく進展してくるものと思われます。
この技術が実用化されると、コンクリートの利用価値がさらに高まるとともに、脱炭素社会の実現にも大いに貢献するものだと感じました。
(小林)
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會澤高圧コンクリート(株)紹介記事等を抜粋
蓄電コンクリートとは
蓄電コンクリートは、電子伝導性炭素セメント材料(ec3)の通称でマサチューセッツ工科大学(MIT)で開発したもので、炭素の微粒子(カーボンブラック)を添加したコンクリートです。
絶縁体であるコンクリートが電気を通す伝導体に生まれ変わる理由
コンクリートの中には、セメントと水が反応する過程で発生する、目に見えない非常に小さな空隙(くうげき)がたくさん含まれており、この空隙を細孔と呼びます。その細孔は連続しており、まるで毛細血管のようにコンクリート内部に張り巡らされています。コンクリートにカーボンブラックを混ぜると、その細孔の周辺にカーボンブラックが留まり、コンクリート内にカーボンブラックのネットワークが作られます。カーボンブラックは電子が通る性質をもつので、コンクリートに電気を通す性質を持たせることができるようになります。
蓄電コンクリートの応用

1.発熱するコンクリート
カーボンブラックを入れたコンクリートに電気を流すと、電子がカーボンブラック内の炭素電子と衝突しながら移動します。この衝撃で発生する熱がコンクリートを温めます。
コンクリートはさまざまな大きさや形状に応用できるため、融雪舗装や住宅の床暖房など、多岐にわたる用途に利用できます。

2.蓄電するコンクリート
蓄電コンクリートは、キャパシタ(コンデンサ)と同じ原理で電気を電気のまま充放電することが可能で、化学反応によって充放電を行うリチウムイオン電池などと違い、キャパシターは電気を静電気としてそのまま蓄えるので、充放電サイクルは10万回以上と、桁違いの長寿命という特徴がある。ただしキャパシタは同体積で比較した場合、リチウムイオンの1/10程度しか蓄電できないデメリットがあります。しかし、建物や土木構造物などの大規模なコンクリートに使用することで蓄電できる面積を増やし、大容量の電気を急速に充放電することが可能です。